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2024.10.02

2024年9月 社有林だより

社有林だより

皆さん、こんにちは。
9月下旬となり漸く暑さが和らいで参りました。厳しい猛暑の中でも持続可能な森づくりに取り組んで来た全国社有林でもやっと涼しい秋風に一息つけるところです。

さて、8月末から9月にかけて 1週間、北欧視察を行いました。行先・目的はスウェーデン・ウメオにあるコマツフォレスト社(KF 社)の林業機械工場の訪問と、その後フィンランド・ヤムサに移動しての林業機械展(FinnMETKO 2024)視察、更には両国での森林及び森づくりの様子を見ることでした。
林業大国であるスウェーデン、フィンランド共に国土広さも森林面積(森林比率70~80%) も日本と類似していますが、森林生産率(木材生産/森林成長量)では日本の35%程度に対して両国は80%と大きく異なります。その理由が、両国共に湖や泥濘は多いが、どこまでも続く平坦な地形の森林でホイール式の大型重機を使ったCTL(=Cut To Length短幹集材)と呼ばれる効率的な操業によるものであることが今回訪問を通じて良く分かりました。日本の一般的に急峻な森林ではチェーンソー操業が主で大型重機(それもホイール式では無くクローラー式)の使用は限られますが、なだらかな傾斜地が多い両国では訪問したどの森林でもハーベスター(伐採/丸太切り)とフォワーダー(集荷/伐採)の2機種で伐採から丸太切りを効率良く行っていました。

一方、今回視察を経て、訪問前は懐疑的であった社有林でのホイール式重機の使用可能性を感じることが出来たのは大きな成果でした。社有林に限らず日本森林での重機使用には先ず作業路を整備して安定した場所で使用するのが通常ですが、今回視察山林では、平坦だが泥濘や左右に傾いた道なき森林に大型重機が予想していたよりも安定かつ柔軟な動きでどんどん入って行き、伐採地に辿り着いたらあっという間に次々と伐採が進む効率的な作業風景を目の当たりにしました。日本森林ではクローラー(キャタピラー)式でないと操業が難しいと感じていた固定観念が変わり、日本ならではの活用が出来るのではないかとの認識が持てたことは意義深いことでした。社有林では伐採の9割がチェーンソー操業によるものですがホイール式の大型重機が一定の場所で使えることになれば効率面だけで無く安全性の向上も図れます。フィンランドの機械展(FinnMETKO)では、期待していたチェーンソーや防護服等安全装備の展示を殆ど見かけませんでしたが、より安全性の高い大型重機の操業が主体であることを考えると納得でした。

獣害対策や環境対応、先住民のことについても大いに参考になりました。獣害は両国ともにムース(ヘラジカ=オス平均体重500㎏の大型)の食害があり成長途上のマツの先端の新芽を食べられるとその部分から樹木が曲がって成長し用材にならない状況は日本でのシカ食害と同様でした。環境対応では伐採後の一定範囲に必ず複数の立木と枯損木を意図的に残し、そこに様々な昆虫やそれを餌とする鳥類が集まる等生物多様性を豊かにする工夫が実行されていました。先住民については、古くからスウェーデン北方のラップランドに住む 「サーミ族」について説明・展示した民族・森林博物館を訪問し、古くからトナカイの狩猟や漁業を営んで暮らしてきた同民族が差別により特定の場所に居を追いやられ、やがて生計の為に林業を生業とし発展させてきた経緯を理解しました。トナカイの飼育・狩猟や漁業権が一定の場所で認められてきたとの話も含めて北海道のアイヌ民族の状況と重なりました。

北欧は湖や森が多く 風光明媚、気候は日本が猛暑が続く中、気温 15~20℃で快適でした。今回の海外視察は2015 年以来9年ぶりの実施でメンバーは全国山林事務所から5人、現地での経験を通じて視野を拡げ目線を高めることが出来たと実感しており、今後は社有林への展開を実践して行きます。ついでながら、どこも物価は高く食事は昼も夜も円安の影響を除いても日本の1.5〜2倍の感覚でしたが、やがて日本の物価が安いのだと改めて実感。物価だけでなく企業価値や株式市場も他国に比べて停滞している状況で、将来に向けて日本は大丈夫か?と心配になりました。そういったことも含めて色々な気づきのある機会となりました。

三井物産フォレスト
神野泰典

社有林だより - 四季折々の一期一会

Finland森 ハーベスター

Finland森林

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