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2024.09.18

2023年4月 社有林だより

社有林だより

※2023年4月、当社社員向けに発信されました社有林だよりを掲載致します。

皆さん、こんにちは。

新年度となりました。三井物産フォレストにはキャリア採用を含めて 5 名の新人が入社し、それぞれが希望に満ちた初々しい態度でフレッシュな活力を職場に齎してくれています。やがて会社を、そして将来は日本林業を背負って立つホープたちであり、大事に育成したいと思います。入社式では、管理を担う全国 75 ヶ所/4.5 万ヘクタール(東京 23 区の7割の面積に相当)の「三井物産の森(社有林)」での「将来に向けた持続可能な森林づくり」が会社の一丁目一番地であることに加えて、気候変動や水源涵養、或いは生物多様性の保全に資する自然資本の発掘と活用による新たな価値創造に取り組んでいることを説明し、新人の皆さんには、先ずは先輩たちの指導の下で目の前の業務に取り組んで確り仕事を覚え実力を養いながら、やがては、日本全国の社有林を舞台に広い視野で将来の可能性を追求して欲しいとお願いしました。

さて、各地の社有林では、4 月を迎えてそれぞれに山の様子が春らしく変化してきています。北海道では、例年よりも平均して 2 週間ほど早い雪解で地面の凍れが緩み、月末のサクラの開花を控えて確りと春の息吹を感じます。三重県の三戸山林では、新緑が芽生え鳥がさえずり、ヤマザクラが満開となりツツジやシャクナゲの花が咲き、こちらは春爛漫です。そうした中、三井物産フォレストでは引き続き将来に向けた持続可能な高品質の森づくりに取り組んでいます。そのベースとなるのは 5 年毎に定める「森林経営計画」です。対象となる森林の位置/樹種/林齢を明らかにした上で、皆伐、植樹、間伐、その為に必要な作業路開設等の予定を含む計画に基づいて毎年の事業プランを立てて施業を実施していきます。尚、「森林経営計画」は農林水産大臣が作成する「全国森林計画」、同計画に即して県知事がつくる「地域森林計画」、更に市町村森林整備計画があり、日本国土の約 7 割
(2,500 万ヘクタール)を占める全国森林を隈なく網羅しており、三井物産フォレストがつくる森林経営計画もそれらの計画に即したものとなります。

三井物産フォレストでは、全国 75 ヵ所の社有林を、東京本社を中心に北海道 3 拠点(札幌/平
取/帯広)、本州 3 拠点(名古屋本拠+三重・長島/岐阜・郡上)、合計約 60 名の人員で持続可能な高品位の森にすべく日々取り組んでいます。60 名の内 14 名が現場での作業を行うスタ ッフで平取/帯広/長島に配置され、各事務所と連携しながら計画に沿った作業を実行していきます。当社の現場スタッフは高い技術と豊富な経験を持つと同時に森への愛情と高品質の森づくりへの情

熱に溢れる士気の高いチームです。安全最優先を第一に、常に先進的な技術や機器の導入を図りながら、より高いレベルでの効率性を追求しています。一方、全国の社有林を当社スタッフだけでカバーできる訳では無く、計画と作業予定の共有と安全面の確保を徹底しながらの地元業者との連繋と行政との関係が大変重要です。社員は 60 名足らずですが、全国 75 ヵ所の社有林の整備に係わる関係者は何百人にも及びます。

林業での機器と言えばどなたでもチェーンソーを思い浮かべると思います。それはその通りで必須機器 ですが、重機にも森づくりでの優れものが幾つもあり、社有林でも大いに活用しています。例えば、ハーベスターという重機は、伐採する木を掴み、伐り倒し、そのまま横にして端から端までずらしながら枝払いし、丸太斬り(“玉切り“と言います)し、更に運搬車に積むところまでを一台で対応します。そ の間せいぜい 5 分。操縦するスタッフの技術の高さに敬意を表すると共に、垂直に屹立する樹高 20m 以上のカラマツがあっという間に丸太になる様子は圧巻です。但し同重機を使用出来るのは 緩傾斜でスペースのある場所に限られ、傾斜のきつい本州の山林ではチェーンソーが主体となります。またドローンの活用方法は色々とありますが、豪雨や積雪などでの被災状況を短時間で確認できる ことは便利です。更に、機器の使用で音が聞こえにくい状況でのヘルメット装着型イヤーマフ(無線)は施業での必要連絡や安全注意喚起に有効です。

持続可能な森づくりでは、先ず森林の 4 割を占める人工林での、伐採→植樹→育成→伐採のサ
イクルをきちんと回して行くことが大事です。同サイクルはスギ/ヒノキで約 60 年です。一方、社有林だけで無く日本林業の問題として、a) 伐採しても丸太価格が安くてコストがカバー出来ない、b)従って伐採(皆伐)を先送りにする、c) 皆伐をしないと植樹も出来ない、d) 結果として、林齢が 60 年を超えた森林が残り、伐採しないと価値を生まないのでコストを掛けた手入れもされず放置される、e) 林業従事者が減少、といった悪循環が至るところで起こっています。最近、国際情勢不安定による輸入木材の高騰や種々環境問題に対する森林の重要性が高まっていますが、国土の 7割近くを占める豊富な森林資源があるのに活用出来ず、長年輸入木材に多くを依存してきたツケが回ってきている現状があります。

ところで、日本の森林の4割を占める人工林の本州での樹種は主にスギとヒノキになっていますが
(林野庁データで7割)理由をご存じでしょうか? それはスギやヒノキが戦後復興で必要となった建設用の木材に適していたことがあります。地面から空に向かって真っ直ぐ 20m、時には 30m にもなる木は軽くて丈夫、そして生育が速い、といった特徴から建材や家具の材料に適しており、太平洋

戦争で荒廃した森林から残った木を伐採しつつ、跡地には最初はスギが、やがては高値で売れるヒノキが、国策に基づいて全国の山で山村の人たちにより額に汗しながら植樹されてきました。ところが木の成長には 60 年かかります。その間、旺盛な需要を賄う為に輸入木材に頼らざるを得なくなり、’60年代からの高度成長期にはエネルギーも薪炭から石油に置き換わったことで、益々輸入木材が主となっていきます。そして植林した木々が 50~60 年経って伐採期となった時には、輸入木材の価格が安い為に国産材は採算割れで伐り出せない、といった状況となってしまったのです。今年はスギやヒノキの花粉が例年より多いとの報道が為される中で、岸田首相は、「花粉症は社会問題」として、対策の一つとして、スギの早期伐採と花粉発生の少ない樹種への植え替え、を唱えられていますが、早期伐採には需要創出と労働力確保が必要、花粉の少ない樹種の植樹をした場合に効果が出るのは花粉発生する 20~30 年後となる、との現実があります。戦略性の高い長期的な取組みが必要となる課題ですが、三井物産フォレストは、日本林業の一翼を担う立場から、そうした問題にも関心を持ち、常に目線を高くして対応していく所存です。


三井物産フォレスト
神野泰典

社有林だより - 四季折々の一期一会

チェーンソー

ハーベスター

三戸山林遠望

ミツバツツジ@三戸山林

ヒカゲツツジ@三戸山林

ヤマザクラ@和歌山佐本山林

和歌山・佐本山林

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