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2024.09.18

2023年3月 社有林だより

社有林だより

※2023年3月、当社社員向けに発信されました社有林だよりを掲載致します。

皆さま、こんにちは。
新年を迎えたと思ったらあっという間に3月も下旬となり新年度も直ぐそこです。今年の冬は例年より寒いと感じていましたが、3月に入って俄に暖かくなり、その為、桜の開花も全国的に平年よりも10日程早まっているそうです。東京では3月14日に最初の開花が観測されたそうで、3月21日が満開予想日と発表されていますが、ほんの少し前まで入学式の絵であった桜が今や卒業式のものとなったかのようです。

社有林では、全国74ヵ所、4.4万ヘクタール(東京23区の約7割の広さ)で、冬の施業が無事に概ね予定通りに進捗していますが、急に暖かくなった気候の影響を少なからず受けています。特に北海道では、最低気温がマイナス20度以下にもなる極寒の下で地盤が凍結し安定することで木の伐採や運搬に使う重機が使い易くなります。同時にチェーンソーを使う作業員の足元も盤石となり作業効率が上がりますが、現場社員の感覚で例年よりも1〜2週間早い気温上昇で雪解けが早まり地面の「凍れ」が緩むことで、3月末位までに完了を予定している作業での安全確保と注意がより必要な状況になっています。

気温上昇は地球温暖化の影響と言われていますが、桜の開花や雪解けの早期化が、これ程短期間で顕著に起こっていることを目の当たりにすると、5年後、10年後はどうなるかと改めて心配になります。2月下旬に道北の沼田山林訪問の際には前週の2m近い積雪で皆伐(かいばつ)現場へのアクセスが阻まれて途中の除雪作業のみを見て引き返しましたが、北海道でも降雪量の多い同地で、通常5月一杯かかる雪解けがどれ位早まるかも要注意と思います。深刻な問題ですが、社有林、及びその施業を通じて気候変動に関わる状況を実感できることは貴重であり、社有林という自然資本を持つ大きなメリットであろうと思います。

ところで、ご存じの通り日本の国土の約7割に当たる2,500万ヘクタールが森林です。その内約3割が林野庁が管轄する「国有林」、約1割が都道府県等地方自治体が保有する「公有林」、そして残りの約6割が個人や当社を含む企業が保有する「私有林」です。「国有林」は明治政府成立時に藩や社寺保有の森林と所有が明確で無い森林を継承して成立し、更に民有林から保安林など重要な森林を買い入れ、一方で国が維持する必要の無い森林を払い下げられました。この為、国有林は全国に拡がり、その多くは地形の急峻な奥地の山々や河川の源流に分布しています。従って、私有林に比べて原生的な天然林が多く、野生動植物の生育地として重要な森林も多く含まれています。一方、私有林は様々です。嘗ては各地に山林王と呼ばれる林業で財を為し政財界にも影響力を持つ大富豪がいた時代もありましたが今は昔。原木価格の長期低迷により木を伐採しても管理コストを賄うことが出来ず、結果として放置された森林が多いのが実態です。林業従事者は1980年の15万人から2020年は4.4万人に減少しており、国公有林も含めて日本林業は経済的に極めて厳しい状況にあります。

それを如実に表す事実が、海外からの輸入木材の増加です。嘗て100%だった国産木材自給率は1964年の木材輸入自由化もあり減少を続け2002年には19%以下まで低下しました。その後、合板メーカーでの間伐材利用増加等により徐々に回復し2020年は42%となっています。以降はコロナ禍での米国住宅需要急増による輸出木材減を主因とするウッドショック、更にはロシアのウクライナ侵攻によって輸入木材の供給不安が俄に高まり、加えて、足下では円安や丸太の最大輸出国であるニュージーランドでのサイクロン被害もあり、国産木材に対する期待が急速に高まっています。

問題は、森林は短期間では変わらないということです。人工林の代表であるスギやヒノキでは、伐採→植樹→育成→伐採のサイクルが略60年であり大幅に短縮することは不可です。過去からの木材自給率低下は、即ち多くの森林で一定期間、皆伐(かいばつ)が為されず従って植樹も行われなかったということであり、過去数十年の不作為のつけが今出てきている状況です。社有林でも同じことが起こっており、主力山林である似湾/沙流を擁する北海道・平取管内では、林齢20〜40年の樹木が極端に少なく、一方、林齢50〜70年のものが多い歪な循環林構成になっています。将来に向けて持続可能な森にする為には、時間をかけてバランスの取れた健全な循環林にしていくことが必要です。但し、海外木材(原木も製品も)の増加原因となった国内林業の競争力強化は引き続きの課題であり、これは官民を挙げて継続的に取り組んで行く必要があります。その為にデジタル化や先進的な機器活用による効率化は勿論大事ですが、同時に気候変動や生物多様性保全、或いは水源涵養といった森林が持つ公益的機能の前向きな活用がより重要になってきます。
社有林も日本林業の一翼を担う自覚を新たに、社内外関係者との連携を密としながら、出来る限りの状況改善と日本森林の価値向上に向けて取組んで参ります。

神野泰典
三井物産フォレスト

社有林だより - 四季折々の一期一会

沼田山林

十弗山林若木

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