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2024.09.18

2023年2月 社有林だより

社有林だより

※2023年2月、当社社員向けに発信されました社有林だよりを掲載致します。

皆さん、こんにちは。
寒い日が続きますがお元気でお過ごしのことを願います。

社有林では、引き続き全国74ヵ所、4.4万ヘクタール(東京23区の7割相当)の各森林で将来に向けての持続可能な森づくりに取り組んでいます。今は冬の施業真っ只中です。特に北海道では氷点下の気温が続く冬は、地面が凍結して固まることで木材の運搬に使う道路が使い易くなり、夏よりも作業効率が上がる面もあり敢えて冬場に行われる作業も実施されます。例えば、帯広の石井山林(308ha)では最低気温がマイナス20度以下にもなる極寒の中で盛んに間伐を行っています。太平洋側にある帯広は北海道の中では決して雪の多い地域ではありませんが、それでも真っ白な雪景色の中で計画に沿って粛々と木々が切り出されます。一方、降雪により山に立ち入ることが難しくなる森も多くあります。特に本州の森林は急傾斜な場所が多いこともあり、東北や北陸の豪雪地帯は元より、中国山地にある広島の君田山林(164ha)等でも5月上旬頃まで入山が出来なくなります。そうした森林では地元を良く知る業者さんと連携しながら可能な範囲で巡視を実施しています。

持続可能な森づくりの基本は、植樹→育成→伐採→植樹、の循環をきちんと維持することで、社有林の4割を占める人工林でその為の施業が行われます。人工林は本州ではスギとヒノキ、北海道ではトドマツとカラマツが主となっています。植樹から伐採までのサイクルは平均60年、従って、今我々が植える木が育ち伐採されるのは次の次の世代ということになります。その間、植樹後5年目位までの下草刈り、その後10年単位で木の成長に応じた間伐により日当たりの良い健全な森となります。シカやクマ、ネズミといった害獣の被害最小化も不可欠です。6割を占める天然林は広葉樹を始め地域により多種多様な樹木が生育していますが持続可能な森づくりという観点は同じで、天然の力を最大限活かしながら間伐を含む必要施業を行います。

こうした持続可能な森づくりを通じて、様々な需要家への安定的な木材の供給と同時に社有林が果たす公益的価値の提供も可能となります。気候変動への対応、生物多様性保全、水源涵養、災害防止といった機能がそれに当たり、それらに対する社会のニーズが高まる中で社有林の価値を提供できる可能性は益々高まっています。

例えば、生物多様性保全について、昨年12月にモントリオール開催の生物多様性条約COP 15で合意され当社も賛同している”30 by 30″アライアンスに社有林の一つが関わっていることをご存知でしょうか? ”30 by 30″は2030年までに陸も海も30%の地域を保護地域とする目標で、日本では2020年末時点で陸域の20.5%、海域の13.3%が保護区域となっており今後既に保護されている国立公園などの地域に加えて、企業有林や里地里山などを加えて保護地域を拡大して行く方針です。社有林の一つである京都・清滝山林(189ha)は、同方針を定めるOECM( =Other Effective area based conservation measure)での自然共生サイトに仮認定されています。同山林は、大文字焼きで有名な五山の送り火で使用される松明用のアカマツや、鞍馬の火祭りで使用されるコバノミツバツツジなどを継続的に育成・供給しており、地域の伝統文化に活用される自然資源の場としての価値基準から認定されました。伝統文化という点では、北海道の沙流山林(5,769ha)を始めとする社有林からアイヌの人たちの様々な伝統行事用の木材供給も行っています。

また気候変動対応では全国主要山林でのJクレジット創出の認可取得を航空機測量にて実現・拡大中、自然保護では北海道で樹木幹の根本樹皮を食すエゾヤチネズミ駆除の為に環境に悪影響のある薬剤の使用を避け、天敵フクロウの巣箱を設置し、昨年は営巣と雛の孵化に成功、等社有林を舞台にした付加価値創出の動きは色々とあります。社有林が更なる価値を生み出す貴重な「自然資本」だとすると、まだまだ手付かずの資本があると言えます。この潜在力を生み出す為には、そのベースとなる『持続可能な森づくり』に向けて弛まぬ取り組みが不可欠であり、それを担う三井物産フォレストは日々工夫尽力しています。

三井物産フォレスト
神野泰典

社有林だより - 四季折々の一期一会

浦幌山林・2月皆伐

2212清滝山林(京都市遠望)

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